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2008年2月 (社員向け)月例社長メッセージ

景況のゆくえと企業の行動

昨年の7月に米国で起きたサブプライム問題(低所得層向け住宅ローンの不良債権化問題)を契機に、世界経済への影 響を懸念する声が日に日に高まってきています。米国の問題が世界経済に影響を与えるという予測は、単に、米国が世界のGDPの約30%を占める大国だから という理由ではなく、経済のグローバリゼーションが進んだ結果という見方をするべきです。つまり、人や企業が国境を超える事業を行う自由度が大きくなれば なるほど、経済の側面においては、世界が一体化していき、ある国で起きたことが、その国内にだけ影響を与えるのではなく、お金や仕事の連鎖によって、世界 的に波及していくようになったということです。これが日米のような二国間のつながりだけであれば、その波及効果の予測は比較的容易にできますが、経済の結 びつきが多数の国で複雑化すればするほど、その波及効果も複雑化して予測が困難になっていきます。

したがって、米国経済がスローダウンしても、中国やロシアなどのいわゆるBRIC’s(ブラジル・ロシア・インド・中国の頭文字)諸国や、ベトナム・タ イ・南アフリカなどの新興国の実体経済が拡大しているので、世界経済全体に、それほど大きな影響は出ないであろうという見方(*デカップリング理論:米国 経済と世界経済の連動性が低くなっているという見方)もあれば、いやいや、そうではない、新興国の経済が好調なのは対米輸出に依存している割合が多いの で、米国経済がスローダウンすれば、やはり世界経済もスローダウンするという見方もあります。どちらが正しいかは、結果を見なければ分かりません。

もし、世界経済がスローダウンすれば、メイテックの主要顧客である日本の大手製造業の収益や投資動向にも影響が出ることが予想されます。その場合は、単な るコストカットだけではなく、技術開発投資の抑制ということも起こりえますし、その結果、メイテックに対しても受注動向に影響が出て、エンジニアの皆さん の稼働率が下がるリスクがあります。しかしながら、一方で、大手製造業各社が技術開発投資を抑制された結果として、採用環境が改善する可能性もあります。 メイテックの30年余の歴史を振り返ると、景況のアップダウンを繰り返す中で、バブル経済の崩壊のときを除けば、景況のダウンサイドであっても増員を継続 してきたからこそ6,000人規模のエンジニア集団に成長してきた、という背景があります。したがって、仮に、景況がスローダウンしたときには、営業的に は厳しくなることを想定しなければなりませんが、そのときにどこまで企業としてのリスクを取って、当社の成長のドライバーである採用ならびに研修などの キャリアサポートを継続するかを経営的に判断することが重要だと考えています。また、仮に、世界経済に対する影響が軽微であって、景況に大きな影響がなけ れば、現在、全社・全グループで取り組んでいる「グループ成長モデル(メイテックとグループ各社が連携して成長していくモデル)」の構築を粛々と遂行して いくという判断を行います。

サブプライム問題だけでなく、素材・エネルギー価格の高騰が続いているのも、新興国の実需要の拡大が続いているという原因と同時に、投機的な資金の影響も あるといわれています。いずれにしても、世界各国の経済が、密接につながっていけばいくほど、経済は複雑化し、一国だけの問題にとどまらなくなってきてい ます。その結果、ますます企業を取り巻く市場や環境の予測が困難になってきています。しかしながら、未来が不確実になればなるほど、市場や環境の変化に振 り回されずに、企業としてなすべきことを粘り強く継続していくことが重要だと考えています。その意味では、メイテックの主要顧客である日本の大手製造業各 社は、自社の持続的成長のためには技術開発投資の継続が重要であることを認識され、それを持続的に実行するために、過去の10年、15年の間に、自社の構 造改革に取り組まれてきた企業が多いのではないかと考えています。したがって、よほどの景況の悪化がないかぎり、技術開発投資を継続される企業の方が多い のではないかと現時点では予測しています。しかしながら、その楽観的見方に偏ってはいけないとも考えています。

市場や環境は変化する、これはゆるぎない事実です。だからこそ、粘り強く、変化に対応できる体質や構造を創り続けることが、企業にとっても、個人にとっても、もっとも重要なテーマだと考えています。

以上

メイテックグループCEO
代表取締役社長 西本甲介