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2009年5月 (社員向け)月例社長メッセージ

有事の過ごし方

日本でも、今次の有事を契機に、ワークシェアリングの議論が活発になってきましたが、日本的な賃金制度の構造的な 部分から社会的な議論をしていかないと、なかなか前に進まない気もします。例えば、日本的賃金の特徴の一つである「家族手当」のような概念は、従来通りに 企業個々における賃金の一部として考えるべきか、社会的な仕組みとして税の優遇などで考えるべきか、というようなことをきちんと整理していかないと、同一 価値労働に対する同一賃金とは何かという議論が進まないのではないかと考えます。 しかしながら、景気の急速な減速は、そうした構造的な議論を行っている時間的猶予を企業に許さず、当社のお客さまである大手製造業各社のほとんどが、減産 に伴う休日増や残業の抑制というかたちで、すでに事実上のワークシェアリングに入っています。こうした事象は、当社のような派遣事業においては、稼働時間 の低下に直結することから当社収益に影響を及ぼします。同時に、社員の皆さんにとっても、超過勤務手当が減少することによる収入減という影響が出ますが、 企業が雇用を守るために行っているという一定の理解をいただいていることと思います。当社においては、間接部門においても、生産性の向上とワークシェアリ ングの両面からの残業抑制に取り組み始めています。 残業抑制による収入減は、個々の家計にも当然のことながら影響を与えますが、「個人の時間が増える」という点に、もっと着目すべきではないかとも考えま す。もともと、製造業の開発の現場は、競合他社との開発競争による納期厳守の一方で、想定外のトラブルへの対処など、残業が当たり前の職場でもあります。 業務によっては休日出勤さえも日常的な場合があり、自宅と会社の往復の日々で、休日は文字通り休息するのが精一杯という社員の皆さんもいたでしょう。した がって、個人の時間、つまり自分自身のための時間を、なかなか持とうとしても持てない生活をしてきた人も、当社の中にも大勢いたのだと思います。そうした 仕事中心の生活を続けた後に、定時で帰宅する生活になってみると、案外、時間を持て余してしまうような人もいるのではないでしょうか。 この「今まで持てなかった時間」をどのように活用するかで、大げさに言うと、その後の人生が変わるかもしれません。今までやろうと思ってもなかなかできな かったこと、具体的には家族のため、自分の将来のための使い方を考えるか、ただ漫然と過ごすか、ということですが、すでに「みんなのコミュニティ」におい ても、こうした時間の活用についての議論も起きています。一念発起、英会話に取り組みはじめた社員がいるという話も聞きました。 製造業の残業抑制や休日増は、永遠に続くわけではありません。在庫調整が進んだり、景気が回復していけば、おのずと元の状態に戻っていくものです。ですか ら、収入減というネガティブな側面だけを見るのではなく、平時にはやろうと思ってもなかなかできないことを行うことができる機会という見方をしたほうが、 得るものが大きいと思います。企業も人も、なかなか一本調子に成長することはできません。また、仮にそうであったとしても、急激に成長した企業が意外とも ろかったりするように、成長過程のところどころで、いわゆる節目のようなものがあったほうが、勢いのいいときには見落としてしまうようなものを発見し たり改善したりする機会にもなります。 有事のまっただ中にいると、有事の悲観的な部分だけに目が行きがちになりますが、少し長い時間軸で物事をとらえながら、有事だからこそできることは何かを考えて過ごしたほうが、企業にとっても個人にとっても、得るものは大きいと思います。 <div align="right">以上 メイテックグループCEO <b>代表取締役社長 西本甲介</b></div>